動物別症例集
ウサギの不整咬合
After
切歯の不整咬合。下の歯が手前に伸びてしまっています。この子は、上の臼歯も外側に90度曲がって伸びていました(ギャラリー写真参照)。
ウサギに最も多い病気の一つが、歯に関連する問題です。
ウサギの歯はすべて常生歯(一生伸び続ける歯)であり、通常は食事の際にほどよくすり減り、ちょうどよい長さを保っています。
しかし噛み合わせが悪い、いわゆる「不整咬合」になると、上手くすり減らずに不適切な方向に曲がって伸びてしまいます。
来院理由で一番多いのは、臼歯(奥歯)が棘のように伸びて口の中に刺さってしまい、痛くて食べられない状態です。食べ物の好みの変化や、よだれ、歯ぎしりなどが主な症状です。重症の場合は、痛みと食べられないことにより腸が動かなくなり、急性の胃拡張が起きて命に関わる場合もあります。
また、白い目ヤニが多くなったり(鼻涙管閉塞)、口周りに膿が溜まって腫れてくる(歯根膿瘍)といった症状も、主に不整咬合に関連しており、これらの病気は一度なってしまうと治療が困難なことが多いです。
以下に、歯のトラブルの原因・予防・治療法を簡単にまとめました。
【切歯(前歯)】
○原因
生まれつき噛み合わせが悪い(特にネザーランドドワーフに多い)。ケージなど硬いものを齧ることが原因の事も多い。
○予防
ケージなどを噛ませないこと。かじり木はものによっては悪影響になる場合も。
○治療
軽度なものでは歯切りで強制することもあるが、定期的な歯切りが必要になる子が多い。
【臼歯(奥歯)】
○原因
牧草(繊維)の摂取不足が主な原因。遺伝的になりやすい子や、切歯の不整咬合から派生する場合もある。
○予防
牧草をしっかり食べてもらうことが最大の予防法。繊維の硬く、栄養バランスのよい「チモシー1番刈り」が推奨される。
アルファルファなどは成兎には栄養バランスが悪く、同じチモシーでも3番刈りになると繊維質が減るのであまり好ましくないと言われている。また、ハードタイプのペレットは、奥歯で砕く時に歯根に負担がかかるため、現在では推奨されていない。
○治療
定期的な歯切り。軽度であれば無麻酔で行うこともあるが、重度な場合は全身麻酔をかけての処置が必要。
モルモットやチンチラなど、ウサギと同じように完全草食の動物は、ウサギと同様に歯のトラブルが多くみられるので、注意が必要です。