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動物別症例集 5ページ目

犬の橈尺骨骨折

トイプードル、チワワ、ポメラニアンなどのトイ犬種といわれる小型犬やイタリアン・グレーハウンドなどの前肢は細いため衝撃に弱く、抱っこ中に落下して骨折するケースや、ソファから飛び降りて骨折してしまうケースが多いです。
特に前腕部を構成する橈骨と尺骨をまとめて骨折することを橈尺骨骨折とよびます。

骨折の程度にもよりますが、通常は体内にプレートを埋め込んで骨を固定する手術を行う必要があります。
ヒビ程度であればギプスなどの外固定でも治癒することがあります。

骨の癒合がレントゲン撮影で確認できたら、再度手術をしてプレートを摘出します。

ちょっとの不注意で二度も手術をするような大掛かりな事態になってしまいますので、高いところには登らない、高いところから飛び降りない、などのしつけを普段から行っておくことが重要です。


爬虫類のクリプトスポリジウム症

クリプトスポリジウムは原虫というごく小さな寄生虫の一種で、様々な爬虫類に対して致命的な消化器疾患を引き起こします。
海外のペットショップにおける爬虫類の死因において、トカゲで44.4%、ヘビで6.7%、カメで4%を占めるといわれています。
国内では特にヒョウモントカゲモドキの発症が多いとされています。

一般的な症状としては、嘔吐、下痢、食欲不振が見られます。
発症初期には食欲があるにもかかわらず体重が減少していくというのが特徴で、末期には重度の削痩を示したり、突然死してしまうことがあります。

クリプトスポリジウムは単純な糞便検査で検出されることもありますが、検出率が低いため、当院では疑わしい子に対して遺伝子検査(RT-PCR法)を実施しています。

効果的な治療法は現在確立されておらず、抗生物質や補液、強制給餌などの支持療法を中心に行います。
基本的には予後不良ですが、根気強く治療を継続すると治癒したという例も報告されています。


犬の潜在精巣

犬の精巣は、出生時には腹腔内にありますが、生後30日ほどで陰嚢内に下降してきます。
潜在精巣とは別名陰睾(いんこう)ともいい、精巣が片側または両側とも陰嚢内に下降せず、腹腔内または鼠径部に停留することをいいます。遺伝するため、繁殖に用いないことが重要です。

また、潜在精巣は正常な精巣と比べ約13倍も腫瘍化しやすいというデータがあります。精巣の腫瘍は悪性のものも報告されています。
精巣が腹腔内にある場合は開腹手術になってしまいますが、腫瘍化しないうちに早めの去勢手術をおすすめします。
当院では生後半年頃での去勢手術を推奨しています。ワクチン接種とあわせてご相談ください。


ハリネズミの口腔内腫瘍

一般に動物は高齢になると、腫瘍の発生率が増加します。
ハリネズミでもそれは同様ですが特に口腔内腫瘍の発生が多いとされています。
ハリネズミの口腔内腫瘍は扁平上皮癌や悪性黒色腫、骨肉腫など悪性のものも多く報告されています。

口腔内腫瘍が大きくなると、採食困難、口腔出血、流涎や歯の脱落などの症状が見られます。

腫瘍の診断には細胞を顕微鏡で確認する検査(細胞診)が必要になるのですが、丸まってしまう子の場合は鎮静や麻酔をかけなければ検査ができないこともあります。
鎮静や麻酔には多少なりともリスクが伴われるので、本人の体調をよく見ながら実施することが重要です。

治療方法は腫瘍の種類にもよりますが、外科的な切除やレーザーメスでの蒸発、もしくは内科的な抗がん剤や消炎剤での治療が中心になることが多いです。

丸まって顔を隠してしまい症状を見逃しやすいハリネズミですが、変わった様子があれば早めにご相談いただき、早期発見につなげていきましょう。


ハリネズミの神経症状に対するMRI検査の有用性

神経症状を呈し,ふらつき症候群(WHS)を疑うハリネズミに対し無麻酔下でのMRI検査を実施した二症例について、2018年のエキゾチックペット研究会にて症例発表を行った。
ハリネズミでのMRI検査の報告は未だなく,適正なデータはまだ存在しない。
今回実施したMRI検査により脳炎および脳腫瘍を強く疑う所見を得られたため,様々な神経症状に対して生前診断が可能となる事が判明した。
今後はデータの蓄積や不動化状態での撮影,さらに造影剤を用いた撮影を行う事により精度の高い診断を行う事が課題であると言える。


デグーの不整咬合

歯のかみ合せが悪くなった状態を不整咬合(不正咬合)と言います。
デグーの歯は切歯(前歯)・臼歯(奥歯)ともに一生伸び続け、硬いものをかじったりすり潰すことで削られていきます。
歯をこすり合せることが不足したり、ケージを齧ったりすると、歯が正常に削られずに不整咬合となります。

特に臼歯の不整咬合では一部分のみが削れて棘状縁という尖った部分ができ、それによる刺激で舌や頬の内側に潰瘍を形成することがあります。見た目に分かりづらく、症状がひどくなってから来院されるケースも珍しくありません。

症状は主に食欲不振と流涎(よだれ)で、そのほかに体重減少、くしゃみ、目やになどがみられることもあります。
また、牧草等の硬いものが食べられなくなることも特徴です。

一度不整咬合となったデグーは定期的な歯削りが必要になります。
不整咬合が軽度の子は無麻酔でも歯削りが行えますが、全身麻酔下での処置が必要な場合もあります。

不整咬合は予防が重要です。チモシー一番刈りのような繊維を多く含む牧草をたくさん食べてもらい、ケージ齧りを防止するために齧り木を用意しましょう。


爬虫類の卵胞鬱滞におけるリュープリン治療の可能性

爬虫類における生殖器疾患は比較的多く、中でも卵塞症が問題になりやすい。卵胞鬱滞は発生機序が明確になってはおらず、外科的な卵巣・卵管摘出術が主な治療法であり、内科的な治療法はいまだ確立されていない。
卵胞鬱滞を呈している爬虫類(ミシシッピアカミミガメの一症例およびサバンナモニターの一症例)に対して、酢酸リュープロレリン(商品名:リュープリン)を用いて治療を行う機会を得た。
今後も症例の蓄積を行い、安全域の決定や投与間隔、有効な症例の見極め、使用法の多様化等が課題となる。
この症例は2017年のエキゾチックペット研究会にて症例発表を行った。


カメの卵胞うっ滞

カメなどの爬虫類の卵巣では、卵胞という卵のもととなるものが常に作られ、通常はそのまま退縮したり卵となって排出されます。
そのサイクルが何らかの原因で崩れてしまうと、卵胞が卵巣や卵管に大量にうっ滞した状態になります。

卵胞がうっ滞してしまうと、他の内臓が押されてしまい元気や食欲の低下、直腸脱や卵管脱などの症状を引き起こしてしまいます。

卵胞は殻が作られる前の卵であるため、特に甲羅をもつカメの場合、レントゲンで確認できないことも多く、診断には腹部のエコー検査が用いられます。

治療法は、甲羅を開いて卵胞を含めた卵巣・卵管摘出手術が推奨されています。
また、手術が難しいような症例の場合はホルモン製剤を用いた内科療法も試されています。(爬虫類の卵胞鬱滞におけるリュープリン治療の可能性


犬の門脈体循環シャント

門脈体循環シャントとは、腸や全身臓器から肝臓へと血液を送る血管である「門脈」と全身への体循環を担う大静脈との間に本来無い異常血管(シャント血管)ができることで様々な障害を引き起こす病気です。
先天性がほとんどですが重度の肝臓病があると後天的に発生することもあります。

症状は元気や食欲の低下・嘔吐・下痢などがあり、重症だと肝性脳症といわれる神経症状(けいれん発作、ふらつきなど)や、最悪の場合死に至ることもあります。
合併症として尿酸アンモニウム結晶による尿路結石などがあります。

診断には血液検査、レントゲン、エコー検査などが用いられ、CT検査が必要な場合もあります。

症状が軽度の場合は内服薬や食事療法で抑えられることもありますが、一般的には外科手術が主になります。セロハン結紮術やアメロイドコンストリクター設置術などで異常血管を結紮、閉塞します。


コーンスネークの尿酸結石による便秘

爬虫類が持つ総排泄腔という器官は排便、排尿、生殖(産卵など)の3つの機能を持ちます。
細長い身体を持つヘビは、尿と同時に作られる尿酸結石を詰まらせて便秘を引き起こしやすい動物です。
尿酸結石が総排泄腔を詰まらせる原因としては、水分不足、運動不足、温度不足(パネルヒーターの上でじっとしているなど)が挙げられます。

便秘を引き起こしてしまうと食欲の低下などにつながります。
詰まった尿酸結石の取り出し方は、総排泄腔付近を押して出す方法、器具を総排泄腔に挿入して取り出す方法、手術による摘出などがあります。

日頃から記録をつけるなどして、正常に排便できているか観察してあげることが重要です。


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