動物別症例集
ヒョウモントカゲモドキ(レオパ) 脱皮不全
ヒョウモントカゲモドキ(レオパ)の脱皮不全について
爬虫類さんの多くは
定期的に脱皮を行い、古い皮膚を脱いでいきます。
脱皮不全とは、
その脱皮が上手くできずに
古い皮膚が残ってしまう状態のことを言います。
飼育環境中の湿度が足りなかったり、栄養状態が悪かったり、火傷しちゃったり、
いろいろな原因で脱皮不全になることがあります。
脱皮不全で残った皮膚が、手足などを締め付けることで壊死を起こしてしまったり
眼に残った皮膚が原因で眼が開かなくなり、食欲が落ちたりすることもあります。
脱皮不全になってしまった子に対しては、
脱皮片を優しく取り除いてあげて、根本的な原因に対する治療や環境整備が必要になってきます。
エボシカメレオンの卵閉塞
この写真はエボシカメレオンの卵塞を呈したレントゲン画像であり、下腹部に見られるぼこぼこした白い塊状のものは全て卵です。
基本的にエボシカメレオンの産卵数は多く一回あたり20~80個ほど産卵しますが、それができないことによって腹部にたまった卵により消化管が圧迫され、食欲不振、腹部膨満が見られます。
原因としては、産卵行動の前に行う掘る行動を満足にさせるだけの土がない場合や、紫外線不足、低気温などの飼育環境の問題や、カルシウム不足などの食餌の栄養の偏りなどがあげられます。
内科的治療としては、カルシウム不足による機能的卵塞を考慮し、カルシウム剤の投与や、卵管収縮作用があるオキシトシンの投与などがあげられますが、一般状態が低下している場合は内科療法よりも、外科的に摘出するほうが良い結果につながる場合もあります。
ヒョウモントカゲモドキの栓子詰まり
栓子とはクロアカルサック内に定期的に溜まる黄色くて硬い塊のことで、クロアカルサックの中にあるヘミペニスの垢に汚れや膿などが溜まって栓子が形成されるのではないかと考えられます。
栓子は通常、自力で排泄されますが、排泄の機会を失うと時間とともに水分を失い、クロアカルサックに張り付いて、糞尿の排泄が困難になり、放置してしまうと、より汚れや細菌が付着され、栓子の付着部位から二次的に感染や出血、壊死し悪化してしまいます。
対処法としては、患部の付着している栓子を優しく剥離し、膿や壊死したところを除去し消毒を行い、抗生剤を投与することで細菌の進行を防ぎ、飼育環境を衛生的に保つことで傷の修復を試みます。
ニシアフリカトカゲモドキの機能的卵閉塞
トカゲの雌性生殖器疾患である卵閉塞の主な症状としては食欲不振、腹部膨満であり、卵殻形成によるカルシウムの大量消費のため低カルシウム状態となり、卵管平滑筋の反応を低下させ難産を助長させたり、元気の消失や神経症状もみられる場合もあります。
治療法としては、水和状態や栄養性の問題を考慮し、補液やカルシウム剤の注射を行ったり、産卵を促すためオキシトシンなどのホルモン注射を行うこともあります。
生殖器自体に異常がみられたり、内科療法が無効であった場合は外科的処置も一つの手段として挙げられます。
また治療だけでなく、産卵床は適切か、環境ストレスはないか、などの飼育者の飼育環境の見直しが最も重要な改善の糸口となる場合もあります。
ヒョウモントカゲモドキの卵胞うっ滞
卵胞うっ滞を呈した場合、卵胞による体腔内の物理的占拠により、初期には消化管が圧迫され、食欲不振と腹部膨満からはじまり、続いて体重減少、元気消失、後躯不全麻痺などがが認められます。
内科療法としては、脱水を緩和するため皮下点滴を行い、低カルシウム血症を防ぐためカルシウム剤を注射を行います。それでも改善が見られない場合は、外科的に卵胞や卵巣の摘出を試みます。
本症例は外科的摘出後も予後は良好で、食欲が戻り体重も増え元気になりました。
爬虫類両生類の代謝性骨疾患(MBD)
概要
主に爬虫類や両生類にみられる病気で、偏食のフクロモモンガでみられることもあります。
くる病や骨軟化症という骨疾患を引き起こすこともあります。
原因
低カルシウム血症が原因とされ、栄養不均衡(低カルシウム、高リン、ビタミンD不足)や、紫外線が必要な種では照射不足により起こります。
症状
成長不良や食欲不振、骨の菲薄化などが主な症状です。重度になるとけいれんを起こしたり、骨格が変形したりします。カメの場合は甲羅の変形やクチバシの過長がみられます。
治療
まずは飼育環境の見直しが必要で、症状に応じてカルシウムの注射や内服薬が必要な場合があります。
爬虫類のクリプトスポリジウム症
クリプトスポリジウムは原虫というごく小さな寄生虫の一種で、様々な爬虫類に対して致命的な消化器疾患を引き起こします。
海外のペットショップにおける爬虫類の死因において、トカゲで44.4%、ヘビで6.7%、カメで4%を占めるといわれています。
国内では特にヒョウモントカゲモドキの発症が多いとされています。
一般的な症状としては、嘔吐、下痢、食欲不振が見られます。
発症初期には食欲があるにもかかわらず体重が減少していくというのが特徴で、末期には重度の削痩を示したり、突然死してしまうことがあります。
クリプトスポリジウムは単純な糞便検査で検出されることもありますが、検出率が低いため、当院では疑わしい子に対して遺伝子検査(RT-PCR法)を実施しています。
効果的な治療法は現在確立されておらず、抗生物質や補液、強制給餌などの支持療法を中心に行います。
基本的には予後不良ですが、根気強く治療を継続すると治癒したという例も報告されています。
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