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動物別症例集

イエダニのハムスター

イエダニのハムスター

ハムスターにもイエダニが寄生することがあります。
基本的には野外のネズミに寄生しているのですが、家の近くでネズミが死んでたりすると、そこから移動してハムスターなどのペットに移っていることがあるようです。

多数寄生すると貧血をおこして、状態が悪くなってしまうこともあります。
イエダニが寄生した場合には、動物に駆虫薬を使用したり、ケージの洗浄したり、部屋全体の燻蒸などを行うことで対処します。

イエダニはヒトの血を吸うこともあるので、早く駆除することをオススメします。


ハムスターの子宮蓄膿症

犬や猫と同じく、性ホルモンの乱れや細菌の感染によって、子宮に膿が溜まり、放置してしまうと死に至る恐ろしい病気です。

症状としては主に陰部から膿や血が見られ、重症例では子宮に膿が溜まることにより、腹部が膨らみ、食欲低下、元気消失が見られます。

治療法としては、卵巣子宮摘出術が主であり、外科的に摘出後は抗生剤により感染をコントロールと支持療法により管理します。
内科のみでの治療は、たとえ軽症例であっても効果は期待できないため、悪化し全身状態が落ちる前に外科的治療に踏み込むことが望ましいとされています。


ハムスターの直腸脱

概要
過度にお腹に力が入ったときに直腸が肛門から飛び出してしまった状態になり、これを直腸脱とよびます。
ハムスターは直腸脱を起こしやすい動物として知られています。

原因
ひどい下痢や便秘、加齢などが原因となって起こります。
下痢にはウェットテイルと呼ばれる腸疾患や寄生虫が関わっていたり、便秘には腎不全や水分摂取不足などが関与していることがあります。

症状
飛び出してしまった腸は、うっ血や感染を起こしてしまいます。
ひどいときは腸が壊死してしまったり全身に感染がまわって、命にかかわることも多いです。

治療
なるべく早くに肛門内に戻します。
再脱出することも非常に多いので縫合糸で肛門を狭めるような処置も行います。
また、原因となるような疾患の治療も同時進行で行います。


皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌という真菌(カビ)による皮膚炎を指します。犬猫だけでなく、ウサギ、ハムスター、モルモット、チンチラ、フェレット、デグー、ハリネズミなど多くの動物に感染します。

子供や高齢、また何らかの病気により免疫力が低下している動物に主に認められます。
頭部や手足から全身に広がるケースが多いです。
また、円形の脱毛が認められることが多いですが、見た目で診断はできません。かゆみがある場合もない場合もあります。

診断は、抜毛検査による糸状菌の検出や、培養検査、ウッド灯と呼ばれる特殊なライトを用いた検査によって糸状菌を検出します。
検出されない場合でも、通常の治療に反応がない場合は試験的な治療が功を奏する場合もあります。

治療は、抗真菌薬の内服薬や軟膏、薬用シャンプーによる薬浴などがあります。治療は長期間にわたる可能性もあり、自己判断で中止しないことが重要です。

また、皮膚糸状菌症は人獣共通感染症(ズーノーシス)の一種であり、人にも感染します。人間ではリングワームと呼ばれる円形の赤い湿疹が特徴的です。
皮膚病の子がお家にいる方で、上記の症状が出た場合は特にこの病気を疑います。飼い主さんは、皮膚科の受診をお勧めします。


ハムスターの皮膚型リンパ腫

リンパ腫とは、リンパ球と呼ばれる血液細胞が腫瘍化したもので、悪性腫瘍(いわゆる「癌」の仲間)に分類されます。

多くの動物で認められる病気ですが、ハムスターの中ではゴールデンハムスターで多くみられます。
ハムスターのリンパ腫は、皮膚に主に症状が出る「皮膚型」と全身に主に症状が出る「多中心型」が主に報告されます。

「皮膚型リンパ腫」の症状は、強いかゆみと皮膚炎が特徴的です。進行するにしたがって、かゆみにより怒りっぽくなったり、脱毛の範囲が広がり、かさぶたや腫れが増えてきます。
簡易的な検査や通常の皮膚炎の治療(抗生物質・抗真菌剤・消炎剤など)で改善が認められない場合、この病気も疑うことになります。
診断を確定するためには、皮膚病変を作る他の病気(ホルモン異常など)の除外と、麻酔をかけて皮膚の一部を切り取る「皮膚生検」を行います。

治療は抗癌剤が理想的ですが、使用可能な薬が限られる、薬による副作用が強く出る恐れがあるなどの問題があります。このため、あえて抗癌剤を使わず、免疫賦活剤や消炎剤などを用いた緩和治療をとることも少なくありません。

同じ齧歯類のデグーでも、同様の症状で皮膚型リンパ腫が強く疑われる症例を経験しています。


ハムスターの体表腫瘍(皮弁形成術)

ハムスターには腫瘍が多く認められます。
中でも頭部に出来やすい腫瘍としては、扁平上皮癌・粘液腫・粘液肉腫などが多いとされます。

このハムスターさんは、頭部に肉腫(悪性腫瘍の一つ)が認められました。
この種の腫瘍はどんどん大きく広がっていくため、外科的な切除が第一に選択されます。

この子の場合は、腫瘍の一部が右の上まぶたに乗っかっていました。腫瘍を切除すると上まぶたも切除することになるため、術後右目の障害が起きることが懸念されました。
右目のできる限りの温存も考えましたが、腫瘍の完全切除を目指し、また術後の本人の不快感を最小限にするために、右眼の摘出も同時に行うことにしました。
また、皮膚があまり余っていない部分なので、皮膚が縫い合わせられないことも懸念されましたが、右頬から眼窩(眼球のおさまっていた部分)をまたいで皮膚をひっぱってくる(皮弁形成)ことで、問題を解消しました。

このハムスターさんは術後すぐにご飯を食べるほど経過もよく、特に生活上の支障は起きてないとのことです。

腫瘍の手術の場合は、今回のように苦渋の選択で正常な部位も犠牲にせざるを得ない場合もあります。手術の結果、起きうる可能性のある合併症や障害の程度を考え、何がその子にとってベストなのか、飼い主さんと獣医師がよく話し合う必要があります。


ハムスターの嚢胞性疾患

中高齢のハムスターでは、お腹の中に嚢胞(液体の入った袋状の構造物)が形成されることがあります。

大きく成長して内臓を圧迫すると、食欲不振や多飲多尿、呼吸困難、消化不良などの症状が認められることがあります。食事を変えていないのに、だんだん太ってきた(お腹が膨れてきた)という場合にはこの病気の可能性も考えます。

ゴールデンハムスターでは肝臓に形成されることが多いですが、他の臓器にもできることがあります。また、ジャンガリアンハムスターでは卵巣が最も頻度が高いという報告もあります。

嚢胞自体に病原性はほとんどありませんが、背景に腫瘍が関連している場合もあるので、超音波検査などの精査が必要です。

症状が強く表れ、生活に支障がでるようであれば、手術が適応になります。大人しい子であれば、お腹に注射の針を刺して一時的に液体を抜くことは可能ですが、また大きくなってくる可能性が高いです。


ハムスターの頬袋脱

ハムスターには大きく広がる頬袋が左右1つずつあります。この中に食べ物や床材を入れて運ぶのですが、たまにこの頬袋が反転し、口から飛び出したままになってしまうことがあります。

ハムスター全般でみられますが、ジャンガリアン・キャンベルに多くみられます。

原因は、頬袋の損傷・感染、腫瘍などのほか、内側に張り付いた床材をとろうとして、飛び出してしまう場合もあります。
炎症が少ない場合や単純な脱出のみであれば、比較的容易に戻すことは可能ですが、腫瘍や重度の炎症を伴う場合、時間が経って壊死してしまっている場合などは切除手術が必要となります。


また、頬袋は予想以上に大きく、前足のところまでものを詰め込むことが可能です。
ものによっては詰め込み過ぎて中で詰まってしまい、頬袋の中で腐敗してしまうこともあるので、注意が必要です。


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