動物別症例集
デグーの骨折(大腿骨遠位横骨折)
デグーさんの骨折
デグーさんも骨折をすることがあります。
この子は1週間ほど前から右後肢を上げて歩いているということで
レントゲンを撮ったところ右後肢大腿骨遠位の横骨折が見つかりました。
デグーさんだとかなり小さいため治療の選択肢も限られますが、
痛み止めを使用したり、骨折の場所によっては外固定(外から固定するためテープを巻く方法)したり、
骨にピンを入れて固定したりします。
少なくとも、脚を上げている子だと
何かしらの理由で痛みがある可能性がありますので
出来るだけケージの2階3階などを外して、
安静にしてあげてください。
そして、お早めに病院で診てもらうことをオススメします。
デグーの不整咬合
歯のかみ合せが悪くなった状態を不整咬合(不正咬合)と言います。
デグーの歯は切歯(前歯)・臼歯(奥歯)ともに一生伸び続け、硬いものをかじったりすり潰すことで削られていきます。
歯をこすり合せることが不足したり、ケージを齧ったりすると、歯が正常に削られずに不整咬合となります。
特に臼歯の不整咬合では一部分のみが削れて棘状縁という尖った部分ができ、それによる刺激で舌や頬の内側に潰瘍を形成することがあります。見た目に分かりづらく、症状がひどくなってから来院されるケースも珍しくありません。
症状は主に食欲不振と流涎(よだれ)で、そのほかに体重減少、くしゃみ、目やになどがみられることもあります。
また、牧草等の硬いものが食べられなくなることも特徴です。
一度不整咬合となったデグーは定期的な歯削りが必要になります。
不整咬合が軽度の子は無麻酔でも歯削りが行えますが、全身麻酔下での処置が必要な場合もあります。
不整咬合は予防が重要です。チモシー一番刈りのような繊維を多く含む牧草をたくさん食べてもらい、ケージ齧りを防止するために齧り木を用意しましょう。
皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌という真菌(カビ)による皮膚炎を指します。犬猫だけでなく、ウサギ、ハムスター、モルモット、チンチラ、フェレット、デグー、ハリネズミなど多くの動物に感染します。
子供や高齢、また何らかの病気により免疫力が低下している動物に主に認められます。
頭部や手足から全身に広がるケースが多いです。
また、円形の脱毛が認められることが多いですが、見た目で診断はできません。かゆみがある場合もない場合もあります。
診断は、抜毛検査による糸状菌の検出や、培養検査、ウッド灯と呼ばれる特殊なライトを用いた検査によって糸状菌を検出します。
検出されない場合でも、通常の治療に反応がない場合は試験的な治療が功を奏する場合もあります。
治療は、抗真菌薬の内服薬や軟膏、薬用シャンプーによる薬浴などがあります。治療は長期間にわたる可能性もあり、自己判断で中止しないことが重要です。
また、皮膚糸状菌症は人獣共通感染症(ズーノーシス)の一種であり、人にも感染します。人間ではリングワームと呼ばれる円形の赤い湿疹が特徴的です。
皮膚病の子がお家にいる方で、上記の症状が出た場合は特にこの病気を疑います。飼い主さんは、皮膚科の受診をお勧めします。
デグーの子宮腫瘍
デグーの腫瘍についてのまとまった報告は、ほとんどありません。
このデグーさんは、元気食欲の低下と陰部からの出血で来院され、お腹の中に直径4cmほどの巨大な腫瘍が見つかりました。
症状と腫瘍の位置から生殖器系の腫瘍が疑われたため、飼い主さんとの相談の上、摘出手術を実施しました。
結果は「子宮平滑筋腫」とよばれる子宮の良性腫瘍でした。ウサギでは比較的多くみられる腫瘍の一つです。
この腫瘍による胃腸の圧迫で元気食欲が低下し、また腫瘍からの出血が陰部から排出されていたものと思われます。
本人は術後の経過もよく、とても元気にしています。
デグーは病気の情報が少なく、特に腫瘍に関してはほとんど文献も見つかりません。
このような場合は、他の動物を参考にして考えられる病態を推測しながら治療をしなければいけません。
情報量が少なく、手術となるとリスクも伴うことから、治療をあきらめてしまう方もいるのですが、適切な治療によって回復が見込めることもあるため、獣医師と飼い主さんとの徹底的な話し合いが必要になります。
デグーの尾の腫瘍(脊索腫)
デグーの腫瘍については、情報が非常に少ないのが現状です。
デグーは他の動物に比べて腫瘍は少ないとも言われていますが、歯牙腫、線維腫、線維肉腫、血管腫、肉腫、リンパ腫などの報告があります。
このデグーさんには、尾の付け根辺りに「脊索腫」と呼ばれる腫瘍ができていました。
脊索腫とは、通常胎児期のみに認められる脊索という機関が出生後も残存し、腫瘍化したものです。
フェレットによく認められるため、フェレットの飼い主さんはご存知の方がいるかもしれません。
フェレットでは、通常尾の先端に塊状の腫瘍が形成されます(まれに尾以外の部分にもできる場合もあります)。
悪性度は低い腫瘍に分類されますが、どんどん大きくなっていくこと、ごくまれに転移があるとの報告があることから、外科切除が推奨される腫瘍です。腫瘍の完全切除が出来れば完治も見込めます。
ただし、デグーの脊索腫については文献による報告がなく、挙動や悪性度などは正確にはわかっていません。
※本症例は、病理専門医の近藤広孝先生執筆の元、海外の学術論文に掲載されました。
Kondo, H., Hara, K., Sukegawa, A., & Shibuya, H. (2018). Chordoma of the Tail in a Degu (Octodon Degus). Journal of Exotic Pet Medicine, 27(4), 1–4. https://doi.org/10.1053/j.jepm.2017.10.025
デグーの尾抜け・尾切れ
デグーは尻尾が切れやすい動物で、不慮の事故による尻尾のトラブルが多くみられます。
特に尻尾の皮膚が裂けて中がむき出しになってしまう事故が多く、尾をつかんだり、どこかに引っ掛けたりすることで簡単に起きてしまいます。
この状態では細菌感染を起こしやすいので、抗生物質の治療が推奨されます。
1~2週間程度で乾燥して収縮していくこともありますが、自分で齧ってしまったり、感染を起こしてしまうようであれば、断尾の手術が必要になります。
同じような事故がシマリスにも起こりやすいため、これらの動物の尻尾はつかまないようにします。
また、尻尾でバランスをとっているとも言われていますので、尻尾が短くなってしまった子は落下事故にも気を付けましょう。
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