動物別症例集
小鳥 トリコモナス
小鳥のトリコモナス
小鳥さんの口からそのうにかけて寄生する原虫の一種です。
セキセイインコや文鳥をはじめ、小鳥さんで認められることが多いです。
症状としては、無症状のこともありますが、
食欲が減ったり、オエオエ吐きそうになったり、口をベロベロ気にしたりする様子が認められることもあります。
親から子供へ、口移しでご飯をあげるときに移ったり、
発情の吐き戻しで移ったりするすると考えられています。
他の子に移っちゃう可能性を減らすためにも
同居鳥と一緒にする前にそのう検査をして、検出しておくといいですね。
セキセイインコの精巣腫瘍
写真のように精巣腫瘍を呈してしまいますと腫瘍から女性ホルモンが多く分泌され、雄であるにもかかわらず、ロウ膜が角化亢進し茶色くなり、その他、太りやすくなったり、飛ぼうとしてもすぐに落ちたりすることもあります。
状態が進行すると、大きくなった腫瘍が消化管を圧迫し、食欲低下、吐き、便が出ないなどの、消化器疾患が見られたり、腹水が溜まり腹部膨満がみられ、肺を圧迫し呼吸困難になる場合などがあります。
治療としては、発情抑制剤を使用し、女性ホルモンの分泌を抑制します。
早期であれば精巣腫瘍を摘出することで完治が望めますが、リスクが高く、現在のところ実施されることはほとんどありません。
ウズラの総排泄腔脱
鳥の総排泄腔脱は産卵後、卵管や排泄腔に傷や腫れが残ってしまい、次の産卵時、イキミが持続して起きてしまうことが一般的です。
また腫瘍などによる物理的圧迫により併発してなってしまうこともあります。
放っておくと排泄腔が腐ってしまい、過度な疼痛によるショック、壊死部からの細菌感染により、死に至るケースもあるため、早急に脱出した臓器を体腔内に戻す必要があります。
再脱出する際は、排泄腔を縫合し物理的に脱出を防止します。その際に抗炎症薬や抗菌薬で腫れや細菌感染をコントロールします。
セキセイインコの腹壁ヘルニア
腹壁ヘルニアとは、お腹の筋肉の裂け目から内臓が皮膚の下に飛び出た状態です。
お腹が膨れているといって来院されることが多く、症状が全く見られないこともあります。ただし、腸や卵管の脱出がある場合、腸閉塞や卵塞の原因になります。
また、突っ張ったお腹の皮膚がキサントーマ(黄色腫)を形成し、出血しやすくなっている場合もあります。
ヘルニアの有無は見た目で判断できないため、レントゲン・バリウム検査・超音波検査によって診断されます。
原因は慢性的な発情によるものが多く、セキセイインコのメスに多くみられます。オカメインコなど他の鳥種でもみられる場合があります。
治療は外科手術になります。
脱出した臓器を戻して、筋肉の裂け目を縫い合わせることで再脱出を防ぎます。この際、発情による再発予防のために、卵管摘出術(哺乳類でいうところの避妊手術)を同時に行うことも多いです。
この病気もそうですが、メスの鳥たちは慢性発情による病気が非常に多く、命に関わることも多いため、発情をさせないような飼育が推奨されています。
鳥の卵詰まり(卵塞症)
鳥は卵を産む動物、そういう認識は皆さんあると思いますが、それが命に関わる事故につながることがあります。
一番代表的なものが、卵詰まり(卵塞症)です。
卵塞症とは、文字通り卵が通り道で詰まってしまう事を指します。卵詰まりの原因は多岐に渡り、寒冷や環境変化のストレス、高齢、多産による低カルシウム血症、産道弛緩不全、卵管口閉塞、骨格異常、腹壁ヘルニアなどがあげられます。
特に初産の子や、多産の子に起きやすいと言われています。
症状も無症状から重症まで多様ですが、腹部に卵が触れてから24時間以上産卵しない場合は、卵塞症と診断されます。
急激な元気食欲の低下・膨羽(羽を膨らませてじっとしていること)・呼吸速迫・床でうずくまるなどの症状が出たら早期の処置が必要なため、暖かくしてなるべく早くの受診をお勧めします。
レントゲンで卵が確認された場合は、いくつかの注射(カルシウム剤など)と、必要に応じて卵の圧迫排泄処置を行います。
上手く卵が排泄されれば元気に戻りますが、状態が悪い子は最悪処置中に亡くなってしまうことも考えられます。
予防法は、とにかく卵を産ませないこと。発情をなるべくさせないことです。
発情関連の病気は、卵詰まり以外にも多く(オスメス関わらず)みられるので、病気の予防を意識した飼い方が奨められます。
鳥の疥癬(かいせん)症・ヒゼンダニ症
疥癬(かいせん)とは、ヒゼンダニとも呼ばれ、動物の皮膚の中に住むダニをいいます。
飼育鳥の中では、セキセイインコにこのダニによる皮膚病がしばしば認められる他、ブンチョウにも認められます。
脚や口の周り、ろう膜のかさつき(軽石用の皮膚病変)として認められ、徐々に広がっていきます。
皮膚の一部を採取し、顕微鏡で見ることでダニを検出しますが、まれに見つからない場合もあるため、特徴的な症状から、試験的に駆虫することもあります。
感染していても症状が認められないこともあり、何らかの原因で免疫力が低下して初めて発症するケースもあります。
また、鳥同士の接触で感染が広がるため、同居の鳥がいる場合には一緒に駆虫する必要があります。
治療は駆虫薬を皮膚に垂らして行います。1回で卵まで駆除しきれないため、2週間毎に4回程度の投薬を行っています。
セキセイインコのマクロラブダス(AGY/メガバクテリア)症
主に小型の飼育鳥に多い胃の感染症です。
セキセイインコに特に多く、その他カナリア、キンカチョウ、マメルリハでも重症化しやすいと言われています。
以前は「メガバクテリア(巨大な細菌)」と呼ばれていましたが、真菌(カビの仲間)であることが確認され、AGY(Avian Gastric Yeast;鳥類の胃の酵母菌)もしくは学名のマクロラブダス(Macrorhabdus)の名前で呼ばれています。
健康な個体であれば発症せずに生涯をすごす子もいますが、何らかの理由で免疫力が低下すると発症します。発症する要因としては、換羽期、環境の変化によるストレスや、他の病気による免疫力の低下などです。
主な症状としては、吐き気、嘔吐、下痢、食欲不振、黒色便、体重減少などで、最悪の場合死に至ります。
診断は糞便検査によって検出します。早期に発見できれば抗真菌剤を投与することで治療可能です。
飲み薬が飲める子であれば飲み薬で、飲み薬が難しい子や効きにくい子は、1週間ごとの注射で駆除していきます。
健康チェック(体重測定、糞便検査)で早期に発見・駆除しましょう。また、衛生的な環境、生活ストレスの軽減などで発症を防ぐことも大切です。
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