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ブログ 2024年12月
カエルの風船病
カエルでは「風船病」と呼ばれる、全身性浮腫症候群という病気が存在します。比較的よく認められる病気で、中には急性の経過をたどり亡くなってしまうことも多い病気です。
今回はそんな風船病について獣医師が解説します。
1:飼育動物としてのカエル
カエルは両生類の無尾目に分類される動物です。カエルは種類によって地上棲、水棲、樹上棲など様々なスタイルで生活しており、いろいろな形式で飼育を行うことが出来、またその見た目から人気を博しています。
カエルは肉食性で、基本的には昆虫などの生きた生餌が要求されますが、最近ではベルツノガエルなどには固形の専用飼料が販売されており、飼育し易くなってきています。カエルは変温動物であり、外気温の影響を受けます。気温・水温は爬虫類よりも少し低めの適温であることが多く、22-28度程度が良いとされています。10度を下回ると冬眠に入ります。
2:カエルの風船病について
別名「浮腫症候群」とも言われます言われます。原因はいくつかあると考えられており、腎疾患・循環不全・皮膚病などのからくる全身性感染症・生殖器疾患・消化管疾患などです。
これらの病気には不適切な飼育環境がかかわる場合があります。カエルなどの両生類は体内の水分調整や電解質のバランスを保つ機能が、腎臓のみではなく腹部の皮膚なども利用するという特徴があります。そのため、飼育水の状況が原因で体調を崩す個体もいます。これが有名な「自家中毒」です。それ以外にも飼育水のpHの低下/高温の飼育水/汚れた水などが原因で皮膚からの電解質輸送の異常や浸透圧調整に異常を来すことがあります。
2-1:腎疾患
両生類は水分を口から摂取はほとんどせず、腹部の皮膚・膀胱からも水分吸収を行うことが出来ます。吸収された水分は腎臓で濃縮されて尿として排出されますが、両生類の腎臓の濃縮能力は限界があり、体内の窒素代謝物やイオンなどを排泄するのに多くの水を必要とします。尿は膀胱に貯められ、一定の量で排出されますが、周囲に水分がなく、脱水しかけた時はこの膀胱に蓄えられた尿から水分を再吸収することによって水分補給を行います。腎臓の機能が低下してしまうと水の排泄がうまくいかなくなります。行き場を失った水分は体の中にたまり続けてしまいます。両生類の浮腫症候群では、多くの場合腎臓が原因とするデータも出ています。
2-2:皮膚炎・全身性感染症
両生類の皮膚には水分吸収の役割を担っている部分があり(ペルビックパッチ)ます。皮膚炎を起こすと水分吸収とともにイオンバランスの調整に深刻な異常をきたす場合があり、それによって浮腫が起こるとも言われています。また、その感染症が全身に広がってしまい重篤化した状態を敗血症(はいけつしょう)い言います。様々な定義がありますが、「感染症が起こってしまった状態で炎症反応が止められず、多臓器不全に陥ってしまった状態」を指します。こうなると体の中から水を排出する腎臓の機能が低下するので、体の中に水が溜まってしまいます。
2-3:循環不全
両生類では心臓のほかにリンパ心臓が存在し、心臓とは別でリンパ液を全身に循環させる装置が存在します。このリンパ心臓の異常により体がむくむことがあります。このリンパ心臓やリンパ管の異常は、不適切な保定・注射・外傷・腫瘍・痛風などで起こることがあります。これにより時に部分的に体が浮腫むことがあります。(局所浮腫)
3:治療方法
カエルの風船病については多くは分かっていません。現在よく使われる手法としては、両生類用のリンゲル液を用います。軽度の場合は通常のものを使用しますが、重度の場合は生理食塩水や両生類リンゲルを高濃度で使用します。この方法は浸透圧の差を利用して体から水分を排出させることを目的とします。この方法は水分を排出させる一方で、脱水症状を起こさせるやり方でもあり、疑問の声を挙げる方もいます。
これらの治療でよくなってくれる子も居ますが、腎機能低下や敗血症の子は残念ながら亡くなってしまう子が多いです。
4:まとめ
・カエルの風船病は様々な原因が言われている。
・治療法は薬浴を主に選択します。
・予後は悪いことが多いです。
(ココニイル動物病院) 2024年12月14日 09:00
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